【治安管理処罰法 改正案】「中華思想」で統一を図る中国政府の思惑

公園スタッフに日本人の服装ではない旨を説明する当人達
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福島原発の2023年8月の処理水放出を受けて、中国は日本政府に反発を強め、処理水放出に反対する旨を他国にも求めたりと、自国の原発処理については何も触れず、むしろ触れられると困るため自分達に非が及ばないように日本をスケープゴート的に仕立てるための外交政策を弄している状況です。

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物議を醸している「治安管理処罰法」の法改正

そんな中国ですが8月末に中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会が「治安管理処罰法(2005年制定)」において「中華民族の感情を傷つける服装は禁止する」との内容を盛り込んだ法改正案を公表しました。中国のネット交流サービス(SNS)で統制強化に反発し「服装の自由」などを訴える声が広がったほか、法律専門家から「恣意(しい)的な運用につながる」と懸念の声が次々と上がる事態となっています。

改正案は、「公共の場で中華民族の精神を損なうとされる衣服やアクセサリーの着用のほか、記事の作成などをした場合は違法行為とし違反すれば最大で10日以上15日以下の拘留と、日本円でおよそ10万円以下の罰金を科す」としています。

当該修正案が公表されたのは9/5ですが、中国の学会等の知識人らはSNSで「規定があいまいなため恣意的に執行される心配があり、民衆との間で不必要な矛盾や衝突が起きやすくなる」と懸念を表明しているようです。中国国内でも当法案に対して困惑した反応が出ているようです。「中華民族の精神」が極めて曖昧で極論「中華民族の精神」なるものは人の数だけあるわけですから困惑の声があがるのは当然かと思います。

そんな中、早速武漢にて服装に関するおかしな騒動がおきました。9月6日に武漢市にある公園にて男女の若者数人グループが中国の伝統的な衣装である漢服をきて撮影をしていたところ、公園スタッフに「日本人の服を着るな」と言い公園からの退去を命じこのグループを追い出したのです。当人達の服装をみればわかる通り、明らかに和服ではないので公園スタッフの「勘違い」ではなく「無知」によるものであります。

男女の服装を見ても分かる通り明らかに和服ではない
男女の服装を見ても分かる通り
明らかに和服ではないことが分かる
公園スタッフに日本人の服装ではない旨を説明する当人達
公園スタッフに日本人の服装ではない旨を説明する当人達

このように自国の伝統的な服装についての理解すらできていない人もいる中で、曖昧な「中華民族の精神」なるもので当改正案が(可決された場合に)現実的に運用できるのか、大変疑問に思いますね。「明確に規定されていないため恣意的な運用につながる」との懸念の声が上がっていますが、そもそも「中華民族の精神」なるものが法律で明確に規定できる話なのか?と思いますね。習近平体制では「一帯一路」構想を提唱しはじめた2018年頃より「中華民族の偉大な復興」が各政策にも度々掲げられるようになったが、今回のような滅茶苦茶な法案を出さないと内部統制が取れないレベルにまで来てしまっているのだろうか?と、他国のことながら心配してしまってます。当法案は情報統制の一環ですが、このような法案が国会にあたる全人代で審議される段階にまで来ていること自体に驚きです。誰も止めなかったのでしょうか?今後中国はますます「近くて遠い国」になりそうな気がしてしまいます。

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漢服女子追い出し騒動の反応について 

この騒動に対する一部の中国ネット民の反応を見てみました。青字は私が翻訳した箇所です。

漢服を着た女性が公園退去させられた騒動に対する中国ネット民の意見
漢服を着た女性が公園退去させられた騒動に対する中国ネット民の意見
湖北省・四川などの地方在住のネット民のコメントは意外にも擁護的意見がある

一部のコメントしか見ていませんが、意外にも擁護的な意見があることに驚きました。そのような擁護的意見に見られる共通点は「そもそも和服・日本・日本人を分かっていない」ということです(自国の文化すら分かってないのでは?疑ってしまう意見もありますね…)。これだけ中国が経済大国になって日中貿易の規模も大きくなったというのに、一部の中国人、特に地方に住む中国人にとっては日本および日本人は依然としてよく知られた存在ではないのです

今回の騒動の舞台となった武漢は私も2年間語学留学をしていた都市なのですが、日中戦争時に日本軍に侵略占領された歴史のある土地柄か、反日感情を持っている人が多い地域でした。武漢のような地方都市の中国人にとっては日本は遠い国であり、彼ら彼女らにとっての日本は中国で未だに製作・放送され続けている反日ドラマ(日中戦争下の中共が日本軍と戦う模様が描かれた戦争ドラマ。ドラマの日本人は往々にしてバカで間抜けで変な和装?で登場し、憎き相手として描かれている)の中で描かれる日本人が彼らにとっての日本人像なのです。今回の騒動で中国側のネット民の反応を見てみましたが、これだけ情報化が進んだにも関わらず、一部であるとは言え中国人にとっての日本人像が旧態依然のままであることに私自身少し驚きました。

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中国政府の思惑・意図についての考察

これはある意味中国政府の情報統制が依然としてある程度は機能していることを物語っているのかもしれません。情報統制がある程度できており、且つ今後の体制維持のためにも情報統制を強化する必要があるため、中国政府は「中華思想の統一」という愛国主義・アイデンティティーに訴えた政策を執っているのかもしれません。

今回の服装についての法改正は日本だけを対象にしたものではないにせよ、確実に日本を意識した政策(中国国内での日本的な風習の規制・排除)であることは明白かと思います。この方針が荒唐無稽なものと受け止めている中国人も少なからずいると思いますので、そうした方々のためにもこんな迷走はやめていただきたいな、と中国留学・中国ビジネスに関わっている者としては心底思っております。

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