【中国大使交代】チャイナスクール出身でない金杉氏起用の背景、SNSの反応は?

中国大使の人事異動 垂氏から金杉氏へ
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10/21(土)深夜に共同通信社より『中国大使に金杉氏起用へ 7年ぶり「非専門家」に』という見出しで速報が出ました。日本政府が次期駐中国大使に金杉憲治(かなすぎ けんじ)駐インドネシア大使(64)を起用する方向で最終調整しており、所謂「チャイナスクール」という外務省の中国語研修組出身者ではない「非(中国)専門家」の人材登用は7年ぶりとのことです。

在中国日本国大使館HPより 垂 秀夫(たるみ ひでお)大使
現中国大使の垂 秀夫(たるみ ひでお)氏
引用元:在中国日本国大使館HP
在インドネシア日本国大使館HPより 金杉憲治大使(次期中国大使)
次期中国大使の金杉 憲治(かなすぎ けんじ)氏
引用元:在インドネシア日本国大使館HP

日中間では日本の福島第一原発処理水の海洋放水を受け、中国は日本産水産物の全面禁輸措置&国際機関で日本批判を展開し、アステラス製薬社の日本人社員をスパイ容疑で逮捕し、尖閣諸島周辺での度重なる領海侵犯など、日中間での問題は多い状況下での中国大使の異動の意味は何なのか?このタイミングでの異動の背景についても考察してみました。

目次
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垂大使(現任)と金杉次期大使とはそれぞれどんな人?

そもそもチャイナスクールとは?

冒頭で紹介した共同通信社記事では「チャイナスクール」出身者でない金杉氏は「非専門家」と表現されていましたが、そもそもチャイナスクールとは何なのでしょうか?Wikipediaからの引用を紹介します。

チャイナ・スクールは、狭義では日本の外務省において中国語を研修言語とした外交官たちを指す用語であるが[1][2]、広義では、民間人なども含め、親中派(親中国派)[3][4]、「中国屋さん」などと称される中国語に通じ、日中の交流に大きく関わる人々を含む[5]。特に、中華人民共和国の政策に同調する者を批判する文脈で用いられることがよくある表現である[2][3][6][7]

引用元:チャイナ・スクール – Wikipedia

現在の日本のマスコミや世間一般で使われる「チャイナ・スクール」は上記Wikipediaの記載の通り、「中国政府の代弁者」として揶揄するニュアンスで扱われることが多い印象ですね

現中国大使(2023/10/22時点)の垂秀夫(たるみ ひでお) 氏はどんな人?

安倍政権下の2020年11月から就任した現中国大使(2023年10月22日時点)の垂秀夫氏は「チャイナスクール」出身です。「チャイナスクール」出身者は一般的に親中派が多いとされていますが、垂氏は「対中強硬派」と見られる異例のタイプのようです。外交官として海外勤務経験は中国、香港、台湾(2度勤務)の中華圏だけであり、これはキャリア組としては極めて異例のようで、「中華圏のプロフェッショナル」と言えます。

チャイナスクール出身でも異例な「対中強硬派」

垂氏が強硬派と見られている理由は日本政府の方針・考えを毅然と主張するところにあるようです。国を代表する全権大使なのですから国・政府の主張を真っ向からぶつけるのは当たり前と言えば当たり前なのですが(当たり前のことをしてるだけなのに「対中強硬派」と区分されることに個人的には違和感を覚えますが)、その詳細についてはWikipediaで紹介されているので下記引用を参照下さい。

2020年12月11日、北京の日本国大使館で記者会見を開いた。この記者会見で垂大使は、日中関係について「主張すべき点はしっかりと主張し、協力できることは積極的に協力することが重要で、是々非々で建設的な関係を築いていきたい」と強調した上で、沖縄県石垣市に属する尖閣諸島を標的とした中国の領海侵犯について「国際法的にも歴史的にも日本の主権であり、今後しっかりと中国側に働きかけていくことに尽きる」と述べ、中国に媚び諂わず尖閣諸島が日本固有の領土であることを公の場で明言した[17][18]

2021年3月16日、訪日していたアントニー・ブリンケン米国務長官とロイド・オースティン米国防長官が東京で開催された日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)に出席し、茂木敏充外務大臣および岸信夫防衛大臣と四者で安全保障に関して協議した後、東シナ海や南シナ海などで既存の国際秩序と合致しない現状変更を試みる一方的な行動を繰り返す中国を名指しで批判する共同発表を発出した[19][20]。同月18日、天津市で垂大使と会談した同市トップを務める李鴻忠共産党政治局委員は、会談の席上で、日本が2日前に日米「2+2」で中国の行動に懸念を示したことについて遺憾の意を表明して中国の「主権や核心的利益を守る決意」を強調したが、この発言を受けて垂大使は憚ることなく中国による一方的な現状変更の試みを批判した上で、「先ほどの李書記の発言は全く受け入れられない」と断言した[21]

2021年12月1日、安倍晋三元首相が、台湾のシンクタンク主催のオンライン講演で、「『台湾有事』は『日米同盟の有事』だ」などと発言したことに、中国外務省は「極めて誤った発言だ」として、同日夜、垂秀夫大使を呼んで抗議した。これに対し、 垂大使は(1)政府[22]を離れた人の発言について政府として説明する立場にない、(2)日本国内にはこうした考え方があることを理解する必要がある、(3)中国側の一方的な主張は受け入れられない、と反論した[23]

2022年9月29日、日中国交正常化50周年の記念イベントが、東京と北京で行われたが、北京の会場(釣魚台国賓館)で、垂大使は異例とも言えるスピーチを行なった。「(日中間で)相互理解が十分に進まず、ましてや相互信頼は全く醸成されていません。この点では、国交正常化以降、最も厳しい状況にある」などと率直に述べた内容は、東京会場で「日中友好人士」たちが口々に述べていた美辞麗句とは、まるでかけ離れていた。日本大使が日中国交正常化50周年を記念する公的な場でこうした発言したことの意味は大きく、また、垂大使は「孔子」や「周恩来」という中国側が否定できない「オブラート」に包みつつ、中国側指導部に種々の注文を付けた[24]

2023年5月21日、中国の孫衛東外務次官が垂駐中国大使を呼び出し、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が中国に関する問題を取り上げたことに対し、「日本はG7議長国として関係国とグルになって中国を中傷、攻撃し、中国の内政に粗暴に干渉した」と批判したが[25]、垂は「中国が行動を改めない限り、これまで同様にG7として共通の懸念事項に言及するのは当然のことであり、将来も変わらないだろう」と反論した[25]

2023年8月22日、日本政府が東京電力・福島第一原発の処理水を24日に海洋放出する方針を決めたことを受け、中国外務省孫衛東次官は垂大使を呼び「中国を含む周辺国や国際社会に核汚染のリスクを転嫁する行為だ」と主張し、日本の決定を「私利私欲に走り、極めて無責任だ」などと非難した。これに対し、垂大使は 「日本が海洋放出するのは『汚染水』ではなく『ALPS処理水』であり、中国側はこの用語を使うべきである」と求めつつ、中国のみが「流れに逆行している」と指摘し、「科学的根拠に基づかない措置は受け入れられない」と反論した[26]

引用元:垂秀夫(在中国大使として)ーWikipedia

日本政府の一環とした姿勢・主義主張を毅然と述べていることに対し、信頼が置け、頼もしいという見方をしている方もSNSで多く見られました(SNSの反応は後述します)。

次期大使の金杉氏はどんな人?

一方の次期大使に内定している金杉氏ですが、中国語を専門とする「チャイナスクール」出身者ではなく、これまでに2015年には外務省経済局長、2016年には外務省アジア大洋州局長も歴任され、韓国外交・対北朝鮮対応の実務に精通している韓国通のようです(「コリアスクール」の座長格であり、日韓関係に関与)

2019年9月から2020年7月まで外務審議官(経済担当)であったが、わずか10カ月という短期間で更迭された形となりました。これは当時の安倍内閣は韓国の日本企業の資産が現金化される可能性が高まる中、韓国に対して強硬姿勢を示すためにもコリアスクールを排除し「韓国業務未経験者」で韓国外交に臨む人事異動をした、との見方が外交筋であったようです。

その後、金杉氏は菅政権の下で駐インドネシア全権大使に就任したわけですが、外務審議官経験者としてのインドネシア大使は30年ぶりの人事だったようです。

SNS X(旧Twitter)での反応

今回の中国大使の人事について、SNSの反応を紹介します。

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金杉氏 中国大使内定のSNSの反応1
金杉氏 中国大使内定のSNSの反応2
金杉氏 中国大使内定のSNSの反応3

SNSにおいては現中国大使の垂氏については日本の立場で毅然とした対応をとってくれていることを評価し、課題が山積しているこのタイミングでの異動を批判する意見が多いようでした

一方の金杉氏に対しては“韓国・インドネシアの高官になめられ、毅然とした対応が取れていなかった”、という主旨の書き込みもあり(その真偽については不明です)、垂氏から金杉氏への大使変更に対して不安を抱いてる反応が多く見られました。

中には金杉氏の調整力は情報収集力に期待する声も見かけますが、金杉氏の大使就任に期待を寄せる声は少数派でありました

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このタイミングでの交代の背景・理由は?

このタイミングでの中国大使変更はどのような背景・理由があるのでしょうか?それを考察する上で、先ずは2000年代以降の歴代の中国大使の着任期間について表にまとめてみました。

歴代中国大使の就任期間一覧表(2000年代以降)

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氏名チャイナスクール内定時
政権
着任離任就任期間
※2023/10時点
備考
阿南惟茂自民党2001年
1月
2006年
3月
5年2ヵ月2005年小泉政権靖国参拝を発端に
反日デモ発生
宮本雄二自民党2006年
3月
2010年
6月
4年3ヵ月小泉政権時に就任
丹羽宇一郎×
民間出身
民主党2010年
6月
2012年
12月
2年6ヵ月 民間出身初の中国大使(伊藤忠商事取締役)
就任中に尖閣問題発生
西宮伸一×民主党2012年9月中国赴任前に病死
木寺昌人×民主党2012年
12月
2016年
4月
3年4ヵ月フランス専門
同期の西宮氏急死を受け中国大使に就任
横井裕自民党2016年
5月
2020年
11月
4年6ヵ月安部政権時に就任
2010年代以降初のチャイナスクール出身者
垂秀夫自民党2020年
11月
2023年
10月
2年11ヵ月 安部政権時に就任
チャイナスクール出身ながらも対中強硬姿勢で有名
金杉憲治×自民党2023年
11月
岸田政権時に内定
インドネシア大使

表にまとめてみる限りですと、歴代のチャイナスクール出身者の就任期間は4年以上はあるのが慣例でしたから、今回の垂氏の異動は慣例上は確実に短いと言えます。

考えられる異動の背景・理由

  • SNSコメントの通り、中国側からの要望があったかどうかはいざ知らず、岸田政権が中国に何かしらの配慮をした結果「物言う垂大使」を異動させた
  • 広い人脈が支える中国理解の深さで知られる一方、高い情報収集能力や発信力が中国政府の警戒を呼んだ側面もあり、中国側の過剰な反応を招く事態を避け、無難なオールラウンダーの金杉氏を選定した。
  • 2023年7月の中国の改正スパイ防止法を受けて、外務省及び日本政府が物言う垂氏の身を案じて帰任させる。
  • 垂氏本人の希望があっての異動(体調不良、一身上の都合の類)

ざっくり上記4点を考えてみましたが、1.については日本を代表する全権大使であれば日本の従来の主義主張をするのは当然であるため、例え中国側から「垂氏の言い方はキツイ」という類の話があったとしても、大使としては当然のことをしているだけであり、いくら岸田政権が昨今人気がなく頼り甲斐がなく映ったとしても中国に肩入れする理由はないはずなので(そう信じたいですね)、①はさすがにないだろうと思います(そう思いたい)。

2.については中国側に配慮しての人事ではないが、中国のプロフェッショナルである垂氏が有能すぎるがゆえに、日本政府側としても中国側に不必要な警戒心を与え、結果的に日本側としても動きづらくなる局面がでてきており、オールラウンダーの金杉氏を選任した、という見方です。見方によっては中国に配慮した人事であり、「弱腰外交」にうつるかもしれませんね。

3.についてですが、これを挙げた根拠としては…

  1. 2013年9月に垂氏が北京で外交官として勤務していた頃に忽然と姿を消してしまい、東京の本省に舞い戻ったことがあった。これは中国側よりスパイ活動を警戒され、外務省が急いで本国に戻したが故の失踪劇だった、との噂があること。
  2. 2023年7月に中国はスパイ防止法の改正があり、スパイ行為の摘発がより強化される可能性が高くなった。

上記2点の情報・環境があるため3.の考えが出たのですが、これはさすがに邪推の域を出ない考えであります。

そもそも垂氏は2013年9月の失踪時(真偽はともかく)は外交官であり、現在は特命全権大使なので「治外法権」が認められる立場であります。スパイ容疑で逮捕される対象とはなり得ないため、(自分で書いておいてなんですが)3.の可能性は先ずないかと考えております。

最後の4.について、垂氏はこれまで中国畑でやってきた方であり、「チャイナスクール」出身の専門家であるとの自負もあろうかと思います。慣例的に4年以上はやるつもりでいたかと思いますが、それができなくなった私的な事情が何かしら発生した、と考えるのも自然なのではないかと思います。ご本人の健康事情かもしれませんしご家族の事情かもしれません。

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まとめ

これまでの中国大使のチャイナスクール出身有無と就任期間についてまとめ、それをもとに今回の垂氏から金杉氏への中国大使の変更の背景・理由を考察してみました。

真実は「政府高官と外務省高官のみが知る」かと思います。我々が真実を知ることはできないかと思いますが、どんな事情で垂氏が帰任されるにせよ、これまで垂氏が日本のために貢献してくれたことには変わりありません。

そしてこれから中国大使に就任することになる金杉氏には日中間の課題が山積している状況ですが、日本の国益のために是非頑張っていただきたいものです。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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